介護業界の人手不足はどうすれば解決するのでしょうか?

介護業界は慢性的に人手不足が言われています。それなのに低賃金だと言われます。本来は需要があるのに人手不足ならば人件費は高騰するはずですが、そうなっていません。これはなぜなのでしょうか。

人手不足の現状

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少子高齢化のために日本全体で労働力が不足しており、介護業界の人材不足は特に深刻です。介護職の事務所のうち66.6%の事務所が人手不足を訴えています。(平成29年度介護労働者実態調査:公益財団法人介護労働安定センターによる)
人手不足をこのまま放置すると、利用者の安全の確保が難しくなりますし、事故が増えると介護スタッフのダメージも大きくなりさらに離職者が増えます。人手不足状態が慢性化すると人員基準を満たせなくなり、指定取り消しを受けることもあります。

人手不足の原因

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前述の平成29年度介護労働実態調査(公益法人介護労働安定センター)によると、人材不足の原因は3つです。1位は88.5%で圧倒的に「採用が困難」、2位は18.4%で「離職率が高い」、3位は10.8%で「事業拡大に寄って必要人数が増大した」です。

採用が困難

人手不足の原因の理由を事業所に尋ねると、88.5%もの事業所が「採用が困難」と答えています。採用が困難である理由は、

  • 「同業他社との人材獲得競争が激しい」が56.9%
  • 「他産業に比べて労働条件が良くない」が55.9%
  • 「景気が良いため、介護業界へ人材が集まらない」が44.5%

となっています。

離職者が多い

採用困難が88.5%なのに対して、離職率の高さは18.4%と割合は少ないですが、その内訳は深刻です。退職者に対して介護関係の仕事を辞めた理由を尋ねたアンケートによると

  • 「職場の人間関係に問題があったため」 20.0%
  • 「結婚・出産・妊娠・育児のため」 18.3%
  • 「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」 17.8%
  • 「他に良い仕事・職場があったため」 16.3%
  • 「自分の将来の見込みが立たなかったため」 15.6%
  • 「収入が少なかったため」 15.0%
  • 「新しい資格を取ったから」 11.5%
  • 「人員整理・勧奨退職・法人解散・事業不振等のため」 7.2%
  • 「自分に向かない仕事だったため」 6.0%
  • 「家族の介護・看護のため」 4.6%
  • 「病気・高齢のため」 4.2%
  • 「家族の転職・転勤、又は事業所の移転のため」 3.8%
  • 「定年・雇用契約の満了のため」 2.7%
  • 「その他」 10.7%

需要の増大

日本の総人口は2018年現在で1億2644万人、うち65歳以上の高齢者は人口の28.1%を占めています。前年度が27.7%なので1年で0.4%も増大しました。2035年には人口の多い団塊の世代が全て後期高齢者になります。今後も高齢者の割合は増えていきます。
高齢者の増加というのはこの60年ぐらい一貫して起こっていたことなのですが、国が人口政策に失敗したことで、昔の甘い政策は10年単位で財政的に破綻し、現在は介護保険制度という形でなんとか小康状態にあります。介護保険制度のもとで福祉業界への民間の参入を政策的に誘導したため、多くの事業者が開業し、事業拡大をしていきました。そのため人材の需要が常に供給を上回っており、慢性的な人手不足の状態にあります。

人手不足の考察

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モノであれヒトであれ、需要が供給を上回っていれば値段は上がります。介護人材は慢性的な需要過多・供給不足であり、これには景気の変動や流行の変化や個別の経営のミスといった変動要因がほぼありません。このとき本来ならば介護人材の給与は高騰しなければいけません。その上で、「給料は高いが仕事がきつい」「すぐにもっと給与の良い同業他社に転職してしまう」「給与が高いのでベテランがすぐに独立してしまう」といった理由で人手不足になっているべきなのですが、実際はその逆です。離職者の退職原因のアンケートからは、仕事と職場に未来を見出すことができず、過重労働に疲弊し、結婚・出産といったライフイベントすらままならないという悲痛な姿が見えてきます。これは斜陽業界で人材が有り余っているときに出てくるはずのものです。
川の水が下から上に流れる時は、おかしいのは水ではなくて構造です。人手不足の直接の理由は給与が安いことですが、真の理由は経済原則を逆向きにさせている構造の歪みでしょう。

人手不足の対策

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政治的な構造変革による対策

本来は構造の歪みは構造を正すことによってしか修正することができません。
具体的にいうと、かつて看護婦(当時の呼称)は同じような低賃金過剰労働に甘んじており、当時は少なかった女性の有資格労働というのが「嫌なら転職すればよい」という恫喝を通用させてしまう構造となっていました。これに対してストライキ(自主的にシフトを組む)で対抗し、さらに利益団体を作り代表者を政策決定の場に送り込むようになりました。現在看護婦が高給であるのはこのためです。

労働生産性向上による対策

構造の歪みは構造そのものを変えなければいけないとは言っても、大した問題でなければうるさいことは言わないのも事実です。要は大した問題でないようにしてしまえばいいわけです。
介護施設の経費の7割から8割が人件費と言われます。それでいて、ほとんどの施設ではこれ以上人を減らしたら仕事が回らないというぐらいカツカツでやっています。この状況では、単純にいえば一人で二人分の仕事ができるようになれば給与は倍になる、ということになります。実際の物事はそれほど単純ではないでしょうが、方向性としてはそうなります。
具体的には事務にITシステムを導入したり、ユニットケアを導入するなどです。センサー技術やAIの活用などで見回りや判断といった業務の軽減はいろいろと検討されていますし、パワードスーツの利用などはSFじみてしまいますが、バリアフリー構造の家屋の増加は狙うところは同じものだと言えるでしょう。

リソースの傾斜配分による対策

人件費の総額を増やせないのならば、配分の多い人と少ない人に分けるというのも解決策にはなります。政治的な構造改革を正しいと思う人からは嫌われるやり方ですが、看護職の給与が上がったために介護職が誕生して、ケア全体における傾斜配分になったとも言えるので、現実的に実行可能な手段ではあるのでしょう。
具体的にいうと、ベテランや正社員の給与を重点的に上げ、新人や非正規社員の給与を低く抑えるというものです。新人や非正規社員の離職率は高止まりしますが、機械化やマニュアル化により賃金の安い未熟練労働者でも可能な仕事を増やして補充します。外国人介護人材の受け入れや資格取得へのインセンティブ付与もこの中に入るでしょう。

経営規模拡大による対策

施設一つ一つの経営規模が小さいために、逆境に対して各個撃破されてしまうということはあります。機械化のための投資ができなかったり、機材調達や求人媒体に対するバイイングパワーによる交渉力が弱くなるなどです。介護保険制度の導入以来一貫して民間資本の導入を狙っているために、他分野の人に「簡単に開業できて安定して経営できる」と言って間口を広げなければいけないという政策的な事情がありますので、少資本の新規参入の間口を狭めることができない以上は、既存施設の統廃合を進めて大型化していく、という政策が取られるものと考えられます。
おそらくこれは、政策的誘導もありますが、同じ理念のところが固まるというようにもなるでしょう。理念というと高尚ですが、もっと即物的に言ってしまうとマーケティング戦略です。例えば富裕層向きにラグジュアリーな介護付き有料老人ホームを運営するとか、介護保険外サービスも組み合わせて多角化で一人あたり単価を増やすとか、施設設計の共同化や提供サービスのシンプル化で経費を減らし中品質で低価格という路線を狙うとか、介護施設と言っても、他の業種、例えばタワーマンションやファミレスと同じような、と同じような戦略は取りうるし、そうなると他業種と同じように、同じ戦略の中で先に勝ちパターンを確立したところが遅いところを併合していくということになるでしょう。

結局は、介護業界はこれらの対策を早かれ遅かれ「全て」行うことになるでしょう。